●『The Study of Orchestration(洋書)』
サミュエル・アドラー(著) /WW Norton & Co Inc
👆ちょっとした調べ物のため、20年ぶりくらいに取り出してみたこの本。S.アドラー《オーケストレーションの研究》。
私は上記本編のみ購入しましたが、この他にワークブックや譜例音声が収録された「別巻(※別売り)」も出版されており、新時代のテキスト(初版1982年)らしく、学習にあたって様々な合理的工夫が成された内容となっています。現在は海外の音楽大学等でも採用例が多いそうです。
全839ページでなかなかのボリューム。実譜例が多用され、ページレイアウトも奇麗に整理されていることから大変読みやすいです。只コレ、洋書のため全編英語なんですね。音楽用語等を知っていれば大方の見当はつくものの、やはり専門書というのは「大方」ではなく「正確に」把握したいもの。ここらは英語が苦手な自分にとって少々もどかしいところです(※本棚で眠りこけていた理由はそこにもある)。
これまで管弦楽法に関してはG.ヤコブ、W.ピストン、そして現在も私の愛書である伊福部昭版、と読み進んできましたが、本書の特徴として楽器別の詳細は当然のこと、その用法を実作品の譜例と比較しながら分析していくという一種の「アナリーゼ的方法論」が採用されています。又、それらは「別巻」の音源により実際に耳で確認することが可能であり、実践に即したメソッドとなっているのが優れた点。そこが音響物理学書のようなやや難解な体裁を採る伊福部版との大きな違いでしょうね。
只、このような進め方の場合、収録されている譜例だけではまったく数が足りず、本書の分析スタイルを理解した後はその方法をもとにして更に様々なスコアの研究を重ねることが必要とも感じます。又、これ一冊ではなく他のテキストも含めて併用すれば更に学習効果は上がるのではないでしょうか。
管弦楽や吹奏楽の作編曲を目指す方はもちろんですが、DTMで壮大なオーケストレーションを作りたい方にもおススメ。近年はPCの性能が向上し、リアルな音色を持つソフト音源であれば適当に打ち込んでもそれなりの音で鳴ってくれますけど、やはり楽器の使い方を理解しているのと、なあなあで済ますのでは(機械であっても)出てくる響きに大きな差が現れます。そんな時に紐解いてみると様々な解決法が見いだせるかもしれません。特に英語が得意な方は一度読んでみる価値はあるでしょう。

The Study of Orchestration - Adler, Samuel
ラベル:オーケストレーション