2019年12月15日

バッハ弓(演奏道具)

★J.S.Bach「シャコンヌ」from BWV1004/Curved Bow


有名なバッハのヴァイオリン独奏のための「シャコンヌ」・・ですが、この曲に馴染みのある人であればちょっと妙な演奏に聞こえるかもしれません。

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(※画像Wikipediaより)

上記の録音は「バッハ弓(Bachbow/Curvedbow)」と言われる特殊な"湾曲弓"を用いて演奏されたもの(※作られた経緯に関しては上記リンクを参照)。通常の弓で重音を出す場合、同時に鳴らせる音は二重音までで、三、四重音が必要な時にはアルペジオ的に和音を崩して弾かなければ不可能、しかしこのバッハ弓では画像のように4絃を直接跨ぐことができるため同時に四重音(又は三重音)を演奏することが可能です。従い、録音の演奏はバッハが書いた 楽曲構造を楽器の物理的制約を受けることなく忠実に再現している ことになります。

私がこの弓の存在を知ったのは20代半ばの頃で、当時読んだ専門書の注釈欄に(やや批判的に)申し訳程度で書かれていたのを見たのが最初。その小さな注釈が妙に気になり色々と調べ始めたのは良いものの、まだインターネットなど一般的ではなく、CDを探すも全く見つからず、資料等も手に入らないまま今に至り、もう忘れかけていたところ最近になってyoutubeの《あなたへのおすすめ》で突如現れたのが上記の動画。20年ほど経ってやっと音の確認をすることができました。

さて、このバッハ弓の演奏を実際に聞いた感想として、悪くはないがやはりちょっと妙です。「シャコンヌ」という音楽の スコア上 の構造は確かに表現されている、和音の音程も正確で演奏技術的には申し分ない・・ しかし、動的なリズム感や立体感に欠けた淡白で冷たい響きに聞こえるのです(※これは管楽器における循環呼吸によってブレスを用いない時の演奏に似ている)。もちろん今日の一般的なヴァイオリンの演奏慣習に慣れてしまっているという事もあるでしょうが、この弓が時代考証上誤った解釈から誕生し、結果的に古楽の世界から淘汰されてしまったという理由は分かるような気がします。

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だが、逆に考えるとバッハ弓の"新しい可能性"というものも見えてくるように感じます。20世紀初頭に誕生した「モダンチェンバロ」という楽器が同様の運命を辿り古楽界からは追放されたものの、現代音楽との相性は良かったように、古い慣習を超えた新しい表現として用いるのならそのポテンシャルは非常に高く、現代曲は元より、アイディア次第ではポピュラー音楽での活躍も十分可能でしょう。私が今後弦楽器のための楽曲を書く機会があればバッハ弓を想定したものとする可能性は大いにあり得ますね。

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オーセンティックな表現が重視される(ちょっと頭の固い...)クラシック界では邪道とされるバッハ弓ですが、現在僅かながら普及活動をしている演奏家もおられるようです。

そもそもひとつの時代様式(この場合は古楽)にはうまく適合しないからといって(権威的な)上から目線で存在そのものを全否定するような態度は傲慢そのものであろうし、未来の表現の可能性を制約してしまうことにもなり兼ねません。これまでの常識・慣習から外れた新しい物や突飛な考え方が登場する時に批判されるのは世の常ですが、思い込みの否定やアンチ思考から入るのではなく、慎重に考察した上で 肯定から入る方が明るく新鮮な先が開けて来るのではないでしょうか?。

バッハ弓による無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲) - ゲーラー(ルドルフ)
バッハ弓による無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲) - ゲーラー(ルドルフ)
posted by アッキー at 14:16| 北海道 ☔| Comment(0) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月02日

激愛?(楽譜制作)

ちょっとした依頼で数日前から開始した、長渕剛:2009MAGNUM TSUYOSHI NAGABUCHI 30th anniversary LIVE 〜ARENA&ACOUSTIC〜より、「激愛」ギター弾き語りヴァージョンの採譜作業が昨日終了する。

★長渕剛:30th anniversary LIVEより「激愛」


本曲は長渕剛主演の映画「オルゴール」の主題歌。私自身はフォークソング全般にあまり馴染みがなく、この「激愛」という曲もまったく聴いたことがない音楽でしたが、スラム奏法(打撃奏法)を始め、独特の3フィンガー奏法などギター演奏はなかなか多彩で新鮮です。

しかし、長渕剛の音楽にとって奏法やら何やらそんな細かいことはどうでも良い。

とにかくこの人・・ 熱すぎ!! もう熱すぎて暑苦しいくらいです。でもこれがソウル(魂)なんでしょうね。燃えたぎるような熱意がなければスターアーティストにはなれない物なのかもしれません。

「魂」をスコアに書くという行為は妙な感じもしますが、私なりにちょっとはうまく表現できたでしょうか?。

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あくまで個人的に作成したものなので今のところ一般公開・配布をする予定はありませんが、もし弾いてみたいという方がいましたらご連絡下さい。要ご相談という形で対応致したいと思います。
posted by アッキー at 11:25| 北海道 ☔| Comment(0) | ポップス全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月21日

アーニーボール「BLACK & SILVER NYLON CLASSICAL GUITAR STRINGS」レビュー

本日はアーニーボール社から販売されているちょっと珍しいクラシックナイロン絃をレビューしてみます。

◆ERNIEBALL
「BLACK & SILVER NYLON CLASSICAL GUITAR STRINGS」
 ¥844
(時価〜Amazon)

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アーニーボールといえばエレキギターやフォークギター用のスティール絃のイメージが強いせいか、クラシックギター用のナイロン絃が販売されていたことは最近までまったく知りませんでした。専用のブランド絃と比べれば廉価製品ぽい感が拭えない印象はありますが、何と言っても価格が安いですし、クラギの世界では珍しいブラックナイロン絃ということでサブギター用にお試しで購入してみました。

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このシリーズは一般的な「クリアナイロン絃」と「ボールエンド付きナイロン」そしてこの「ブラックナイロン絃」という3種類が販売されているようです。

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高音側のブラックナイロン。

表面がツルツルすぎて妙な感じです。どこかのレビューにも書いてありましたが、この感触はghsのブラックナイロン(ウクレレ絃)にそっくりですね。楽器に取り付けていない状態だとやや細めに感じます。仕様書によるとゲージは1絃側から028/ 032/ 040/ 030/ 036/ 042のミディアム・テンションとなっているようです。

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ブラックナイロン絃はD'AddarioやLa Bellaなどのメーカーからも販売されていますが、普段ほとんど使うことが無いこともありちょっと見慣れない感じもします。ちなみに少し暗い部屋などで弾くと高音ナイロンの3本がほとんど見えなくなる(ww)ので、ポジションの目視を必要とする入門者や初級者の方にはあまりオススメしません。尚、張絃後は2日程度で安定します。

★【全体的な使用感】
まず、この絃はテンションがかなり強めです。特に低音絃は"ハナバッハの青"レベルの張りの強さを感じます(本当にこれミディアム・・?)。そのせいもあってか剛性感がありピッチが良く、ダウンチューニングにしても適正な張りが保たれます。しかしその反面、高音ナイロン側は妙に細く華奢な感があり(1〜2絃は特に細い印象)低音巻絃と高音ナイロンのゲージ設定がアンバランスな印象も受けます(※但し実際のゲージ表を見る限り他製品と比較的してそれほど極端な差はない。あくまで感覚的なものか?)。これはもしかしたらエレキギター等からの持ち替えを想定しているのかもしれませんがちょっと気になる点です。

音色は柔らかでおとなしいマイルド系の響き。低音巻絃は音が太く、ロー又はミドルポジションでのゆったりとしたメロウな楽曲に合っている気がします。ただナイロン1〜2絃に関してはエレアコを鳴らしているような音の細いペチペチ感が目立ち(これはアルアイレで顕著)低音の太さと比べるとやや不自然です。しかも低音巻線が全域にわたり音が太く安定してるのに対し、ナイロンはハイフレットに移行するごとに力強さが薄れ音が細くなって行くため、高音部が多用される音楽(大聖堂の第一楽章など)ではバランスを保つのが難しくシビアなコントロールが要求されます。また楽器の相性にもよるかもしれませんが、パワー感を表現するような強い響きの音楽にはあまり向かず、音色の多様性にもやや乏しい傾向を感じます。

耐久性に関しては毎日1時間程度弾くとした場合、低音巻線が2週間ほどで音に張りがなくなり、ナイロンは3週間程度で柔軟性が落ちてきて音が固くなりノイズが目立ってきます。但し、テンションが強いことから絃がダレてしまうようなことはなく、軽い練習のみに使うのであれば2ヶ月以上使用可能。他の絃と比べても耐久性は悪くない印象です。

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◉【総合評価として】
★★★☆☆〜まあまあ
本格的なクラシック楽曲向けではないが、練習用途やコードストローク中心の音楽ではそれなりの価値がある

やはり高音絃のパワー感が弱いのは大きな不満点。音色そのものはそれ程悪くない分ちょっと残念なところです。高音ナイロンのみを他の絃に入れ替えるというのも手ですが、低音絃も"音が太い"こと以外は特に目立った特徴がないことから正直オススメしません。

価格は安いため、練習用として早期に絃交換しつつ新鮮な響きを保ちたいのであればそれなりの価値があるでしょう。テンションが強いので指の訓練にはなるかもしれません。また今回は試していませんが、エレアコやサイレントギター等でのコードストロークやオブリガート中心の演奏であれば結構使える絃に化けるような気もします(アーニーボールはそこを狙っている感がありますね)。

楽器によっても相性が色々変わりますので、この記事はあくまで参考にしながら最後はご自身の耳で判断してみて下さい。

【正規品】 ERNIE BALL 2406 クラシックギター弦 (28-42) ERNESTO PALLA BLACK & SILVER NYLON CLASSICAL GUITAR STRINGS
【正規品】 ERNIE BALL 2406 クラシックギター弦 (28-42) ERNESTO PALLA BLACK & SILVER NYLON CLASSICAL GUITAR STRINGS
posted by アッキー at 00:45| 北海道 ☔| Comment(0) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする