2020年03月07日

カリンバの記譜に関する考察と実践(前編)

以前の記事で紹介したカリンバ(下記は17鍵の楽器)。

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ここしばらく演奏法を始めとして、機能・特性・特殊な用法まで、コンポーザー/アレンジャーの立場から色々とこの楽器の可能性を調べてきましたが、もうひとつ腑に落ちない点があります。それはカリンバという楽器の「記譜法」に関する部分です。

本来のカリンバは即興演奏を主体とするものであって楽譜に書かれた音を正確に演奏するという性質ではないかもしれません。しかしカリンバ入門者の多くは人気のポップスや有名なクラシック曲を弾いてみたいと思っている方が大半ではないでしょうか。であれば当然それらの楽曲がアレンジされた楽譜を用いることになりますが、現在市販されているものは一般的な五線譜であることが多いようです。

カリンバはシンプルな楽器なので一度覚えてしまえばそれほど読譜に困難は生じないかもしれないし、コンポーザーにとっても五線譜を使うことで記譜上の自由度が広がるのは事実。ただ、全く音楽経験のない入門者(特に独学者)にとって五線譜を自然に読むという行為は想像以上に敷居が高く、特にカリンバは左右交互配置という独特な音板配列を採用していることから視覚心理的にも混乱を生じてしまい、結果的に演奏を楽しむ前に諦めたり飽きてしまうことが起こりがちです。ギターのTAB譜や大正琴等の簡譜(数字譜)がアマチュアにとって実用的な楽譜であるように、内容を感覚的に理解でき、容易に演奏可能な楽譜の整備がカリンバにも必要ではないかと考えます。

●《Kalimba Tabs》●

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Kalimba Tabs(カリンバ・タブズ)は動画などでよく見かけるカリンバ用の楽譜。現代音楽の記譜法であるクラヴァールスクリボによく似た外観を持つ書き方で、楽器を真上から見た形で表示し、時間軸は上方へ流れるようになっています。この記譜の優れたところは、楽器の形状そのものが見たまま書かれているため誰にでも理解可能という点。上にスクロールして行く動きも感覚的に理に適っているように思います。入門者にとって面倒な事を考えること無くすぐに音を出す一歩を踏み出せるのは大きな利点でしょう。

しかしながら現状では欠点も見えてきます。まず、ソフトウェア自体のフォントが全体的に雑で汚いことから、横線で表示される小節線の位置や音符の符尾・リズムが分りづらく、読譜するのに若干ストレスが掛かること。これはソフトのグラフィックが美しく描写されれば改善する問題かもしれません。

次に、タブラチュアや簡譜共通の問題ですが、主旋律(メロディー)がどの音なのか分からないという点が上げられます。メロディーのみの単純な楽曲であれば然程気にする必要は無いかもしれませんが、伴奏が付いていたり内声が含まれる場合にそれらの差別化が難しく混乱してしまう可能性が高いです。音楽の主要素であるメロディー、ハーモニー、リズムは独立させて記譜する必要があるように思います。

もう一点として、これを印刷譜化(又はPDF化)した場合、紙面のスペースが大きく盗られてしまうこと。Kalimba Tabsは上方へスクロールする記譜法なので当然上下スペースが大きくなります。

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恐らくA4用紙(縦入) へ印刷した時にはこのような感じになると思われますが、楽器そのものを視覚化しているため表示率を縮小して何列も表示するには読み易さの点で限界があり、上例のように二列化すること(又は”横入”で三列程度)が限度に思います。ここに記譜情報を多く入れようとすると、小節(上下)スペースを詰めるか、紙の大きさを大型化(又は縦スクロール専用紙化)するか、ページ数そのものを増やすしかありません。楽譜全体が圧縮された結果として複雑に見えたり、ページ数が無闇に増大してしまうことは演奏者に心理的負担をかけてしまう要因にもなりあまり好ましくないでしょう。

実際に音が鳴りガイドが表示される動画やアプリとして用いるならばそこそこ良い線を行っていますが、楽譜としての「Kalimba Tabs」はまだまだ発展途上の記譜法であるとも言えます。

上記をまとめると

@ソフトフォント/グラフィックの問題
A旋律や内声部の差別化
B紙面スペースの節約

ではどうすれば入門者にも適した楽譜に近づくことができるのか?。次回(後編)は私なりに考えてみた方法を実践してみたいと思います。
posted by アッキー at 00:22| 北海道 ☔| Comment(2) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Kalimba Tabsのソフトウェアはどこで買うことができるのでしょうか?
Posted by yutayamauchi at 2020年08月11日 07:41
お返事遅れました。

kalimba Tabsは海外製のソフトで、下記のサイトからダウンロード販売(30$)されています。

https://www.kalimbamagic.com/info/how-to-play/31-ktabs-kalimba-tablature-software

以前はMac版も用意されていたはずなんですが、現在はWindowsに統一されてしまったようです。
Posted by 穐吉(管理人) at 2020年08月22日 08:31
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