2019年02月20日

メイプルの響き?(ギター材)

最近、ギターショップの販促メールやyoutube等のギター演奏動画を見ていて気になっていたことですが、ここ数年クラシックギターの木材にメイプル(楓) を使う例が多くなってきたような気がします。

一般的なクラシックギターでは、表面版は松(スプルース)か杉(シダー)、サイド・バックに関してはハカランダ (ブラジリアン・ローズウッド)を最高峰として、ローズウッド材を用いるのがこれまでの通常であり常識とされてきた感があります。ただ、近年は環境保護の問題からハカランダ材は入手が難しく、他のローズウッド系の木材も徐々に輸出入規制が入り始めていると聞きます。エレキギターではグラファイトやリラコード等の特殊素材を用いているものも多いですが、生鳴りが重要とされるアコースティック楽器ではなかなかそうもいかないのが現実。このメイプルの採用は制作家にとって苦しい代替策なのか、それとも新時代の幕開けであるのか・・

ところでメイプル材のクラシックギターって音はどうなんでしょう?。

ヘルマン・ハウザー3世:2006年制作】☞詳細
(画像=ギターショップAURA提供)
1.ヘルマン・ハウザー3世.jpg

ハウザーがメイプル仕様の楽器を作っていたのは初めて知りました。ちょっと妙な気もしますがデザインそのものは悪くはないかも。

ゲルハルト・オルディゲス:2018年新作】☞詳細
(画像=ギターショップAURA提供)
2.ゲルハルト・オルディゲス2018.jpg

ゲルハルト・オルディゲスは最近よく見かけるドイツ人制作家の楽器。写真で見る限り大変美しい出来です。ぱっと見はシープレス材のフラメンコギターのようにも見えます。

尾野 薫:2019年新作】☞詳細
(画像=ギターショップAURA提供)
3.尾野薫2019jpg.jpg

尾野薫という制作家の名前は始めて知りましたが、この楽器はトーレスのコピーモデルで絃長640mmのややショートスケールとなっているようです。表面版の松とサイドのメイプルとの色合いもバランスよく仕上がってると思います。

私自身はメイプル仕様の楽器の音を生で聴いたことがないのでとりあえず動画で確認してみるしかありません。いくつか興味あるものを見つけましたので紹介してみます。

ゲルハルト・オルディゲス(制作年不明)


音は大変良いですが・・録音時のマイキングや残響処理があまりにもしっかりし過ぎていて逆に生音のイメージが分かりにくいかも。思ったより柔らかめの音質で芯のあるしっかりした響きだと思います。

桜井正毅 Maestro RF Maple(2017年制作)


桜井もメイプルの楽器(しかもRFで)を作っていたんですね。この動画はオフマイクで残響処理もされていないため実際の生に近い音ではないでしょうか。大変乾いた明瞭な音質で、松材特有の響きがメイプルによりさらに増大されているような印象を受けます。個人的にはかなり好みの音です。

この他にも数点聴いてみた結果、総じて"音の輪郭がはっきりし、乾いた抜けの良い音"といった印象。これならハカランダの楽器と比べてもまったく謙遜はないように感じます。そもそもヴァイオリンの世界ではサイド・バックにメイプルを使うのが普通であり、今までギターのボディー材として採用される例が少なかった(※エレキギターは除く)こと自体が不思議ですね。このメイプル材・・クラシックギター製作界における救世主になるのでしょうか?。

こんなのを見ているとぜひ自分でも弾いてみたいですが、なにせここに出てくるような楽器は100万円超えのものばかりなので現在の私に購入することは到底無理ですな・・。もし何かしらのチャンス(?) があるのならメイプル仕様の楽器も候補の一つに入れたいと思っています。
posted by アッキー at 12:38| 北海道 ☔| Comment(0) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月14日

燕になりたい・・の謎(中国音楽)

先月末から2月初めにかけ、ある依頼により、中国音楽「燕になりたい (我願做一只小燕)」という曲の『二胡と古筝(中国式琴)二重奏』用編曲を行いました。

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曲そのものは以前から馴染みがあった事もあって作業自体は一週間ほどで終了し、引き渡しまで特に問題もなく順調でしたが、実はこの曲・・以前から気になっていた点があります。

二胡奏者、陳敏(チェン・ミン)さんの演奏で一躍有名になった「燕になりたい」ですが、作曲者は不詳とされ、様々な楽譜を確認しても作者の項は常に不明になっています。中には中国の古典音楽や民謡としている楽譜やCD、ネット記事も見受けられるようです。そんなこともあり、実は私自身も長いこと作者不明の中国古典民謡だと思い込んでいました。しかし編曲が終わって改めてこの曲のことを調べていると、どうやら作曲者がいて、しかもそれは同時代の人物らしい・・ということが分かってきました。

陳敏さんのブログによると、この作曲者は「梁和平」氏とされ、中国サイトの《百度百科》で調べると、古典の人物などではなく現代の、しかも中国ポップミュージック界で活躍する有名なプロデューサーであるらしい・・

この話が正しいのであれば、「燕になりたい」は"中国のポップス音楽"であったということになるでしょう。そういえば多くの録音や動画などで確認できるのはピアノやギターなど西洋楽器とのアンサンブルが多く、今回私が行ったアレンジのような古典楽器同士で伝統曲のように演奏されるものは殆ど見受けられません(二胡と楊琴くらいか?)。ということは最初から現代のポップス曲として創られたものだったのか?。

ちなみに、楽曲権利を調べる際に私がいつも利用している《J-WID》の作品データベース検索を確認すると、3件の該当結果すべて作曲者は不明(もしくはANON="匿名")の上、出版社契約も無く、他の項も日本人が手がけている作詞以外はJASRACの管轄外になっており、権利者がどこの誰にあるのかすら不明。 PD印(パブリックドメイン)が記されていないということは著作権落ちの古典曲などではなく、今時代の何者かが権利を有している(可能性がある)ということなのでしょう。あまりにも謎が多すぎる・・

これはあくまで私の勝手な想像ですが、この梁和平さんという人は1970〜80年代に頭角を現し、中国ポピュラー音楽の発展に貢献された方だそうです。だとすれば時代背景的に、資本主義文化の導入を強く否定していたという悪名高い"文化大革命"に巻き込まれそうになった、中国の政治的な理由により名を隠す必要があった・・という可能性も大いに考えられます(実際この時期に投獄されたり亡命を余儀なくされた中国人音楽家は多い)。真実は分かりませんし想像するしかありませんが、いずれにせよ一部の情報を除き、この「燕になりたい」は作者不詳としておいた方が良いのかもしれませんね。

いろいろな意味で謎ゆえにロマンティックでもある「燕になりたい」。もし権利落ちの古典曲であったならば編曲譜の公開販売を実施する予定でしたが、どうやら色々と訳有りの音楽のようなので一旦取り止めにしました。後日改めてブログ記事にて楽譜の詳細を再掲載する予定です。

スコアに関するお問い合わせ・ご質問のある方は右のメールフォームからご連絡ください。要御相談という形で対応させて頂こうと思います。
posted by アッキー at 12:40| 北海道 ☔| Comment(0) | 音楽・楽譜・書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月06日

楽譜出版のご案内(ギター譜)

前回の第1巻に続き続編。クラシックギターのための実用的な楽譜、タブ譜で弾く「クラシックギター名曲選集」第2巻(穐吉馨監修)販売開始のお知らせです。

タブ譜で弾く「クラシックギター名曲選集」Vol.2(全8曲)
出版番号MB2428 スコア35ページ(タブ譜&運指付き)
難易度★★★★☆(中級〜中級上)演奏時間:各曲3〜5分程度 
PDF版¥2,000 印刷版¥2,800 ☞Twitter
1.vol.2(320×450).png

2.第二巻(270×450).gif

【 掲載曲よりスコアサンプル 】
★ワルツ第3番(A.バリオス)

※一部ですが他のサンプルもこちらから視聴できます

▶上記の楽譜は MusicBells 出版で販売中です。

この曲集はクラシックギターの主要なレパートリーを、タブ譜による音のポジション・運指をすべて併記し、ギターをもっと《身近に気軽に簡単に》演奏を楽しむことを目的に作られたものです。第2巻は主に中級から中級上の方を対象とし、高度なテクニックが必要となるレパートリーも多くなっています。

タブ譜によるポジション・運指は私自身が監修したものですが、極力特殊な弾き方にならないようにある程度一般的、又は合理的と思われるものを採用しています。但し、中級以上のレベルになると色々な弾き方の可能性や奏者自身の好みも考えられる事から、違和感のあるポジションや運指であったり、弾きにくい場合は奏者の任意で自由に変更しても構いません。その場合は五線譜側を参照下さい。

▶《掲載曲と演奏ポイント》

ブーレ(リュート組曲BWV996より:J.S.Bach)
シンプルな2声対位法で軽快なリズムを持つ曲です。インテンポで歯切れ良く。フレージングにより両声部を差別化させ全体の立体感を表すことも重要。リピート時には楽譜に書かれていない装飾音等を入れるのも良いかもしれません。

サラバンド(無伴奏ヴァイオリンパルティータBWV1002より:J.S.Bach)
テンポはゆっくり慌てず、音色は柔らかく。多く現れる3〜4和音はアルペジオに崩すものと同時打絃するものを弾き分けるとメロディーがより良く浮かび上がります。大変美しい旋律なので歌心を大切に。

エチュードOp.6-10(F.ソル)
連続するオクターヴは機械的にならず軽快にメリハリをつけ、運指には合理性をもたせて。後半はイギリス国歌「神よ女王陛下を守り給え (God Save the Queen)」の主題による4声コラール。和音の連結がわりと難しいですが、次の和音へ移動する直前にわずかな間を入れて音を切ることがコツです。

アラールの華麗なる練習曲(F.タレガ)
アルペジオ音型のトップノートは旋律音ですので意識的に他の音と区別して弾きましょう。テンポが速くポジション移動も激しいですが、スムーズ滑らかにそして軽快な表現で。この曲が弾ければアルペジオの技術に関してほぼ問題ないと思います。

アルハンブラの思い出(F.タレガ)
有名なトレモロの名曲。運指パターンは様々なものがある中で、ここでは現在一般的なメロディーを2絃で統一させるパターンに依っています。ダイナミクスに変化をつけて音楽的に。

前奏曲(大聖堂より:A.バリオス)
第1楽章の抜粋。ハイポジションでバランス良く澄んだ音を出すのが結構難しいので、正しいフォームでしっかり指を立てて。音色は優しく柔らかく。右手のピッキングは旋律音をアポヤンドで鳴らしますが、様々な指使いがあるので色々試してみて下さい(私の場合はメロディーを i 指で弾いています)。

ワルツ第3番(A.バリオス)
演奏にはかなりの総合的なテクニックが要求されます。ポイントとしては楽譜を杓子定規で判断しないこと、例えばある音が2分付点で書かれていたとしても場所によっては2分や4分の音価で短く切って移行する...等の工夫が必要です。この処置が不十分だと恐らく運指が間に合わず、音楽的にも鈍重なものとなってしまいます。また、曲の進行が複雑なことから演奏前に全体の流れ(リハーサルマークや反復記号の位置等)をチェックしておくことも必要でしょう。尚、楽譜に書かれている〈Repetir〉は”繰り返す”〈y sigue〉は”そして続けて”という意味で、これらの言葉の前に※印がある場合は2回繰り返した後の指示になりますので注意して下さい。スコアサンプル動画のジョン・ウイリアムズの演奏は上記を示す良いお手本ですので参考にすると良いでしょう。この曲を最後まで軽快に表情豊かに弾くことができればレベルはすでに上級です。

最後のトレモロ(A.バリオス)
アルハンブラに負けず劣らずとも言えるトレモロの名曲。バリオス作品に共通することですが、左手の拡張やハイポジションでのセーハーがかなり厳しい部分も出てくるため、手が小さい人にはかなりの難関とも言えます。フレーズ自体はある程度パターン化されているので覚えやすいと思いますが、上記の物理的要素をどう克服していくかが課題になるかもしれません(※この点に関しては、手の小さな「朴葵姫(パク・キュヒ)」さんの演奏を参考にするのも良いかと思います。こちらの動画で確認してみて下さい)。右手のトレモロ音は柔らかい音と硬い音を使い分けると劇的な効果が出るでしょう。

クラシック関係者のみならず、様々なジャンルの方多数のご利用お待ちしております。
posted by アッキー at 12:11| 北海道 ☔| Comment(0) | ギター曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする